魔法少女となってしまった次の日、れいりはいつものようにりじゃと登校し、部活の朝練へ行きました。
れいりは柔道部なので、剣道部や弓道部の生徒達と顔を合わせることが多いのです。そして剣道部で同じクラスの子に、少女漫画や魔法少女ものが好きな子がいました。
「りう君、おはようっす」
「おはよ、れいり」
彼の名前は庭蓮りう。教室でも部活でもよく顔を合わせるため、互いに話すことも多い関係です。りうが魔法少女に詳しそうなのも入学して数日でわかりました。れいりはなるべく事実をぼかしながらりうに聞きました。
「この町に魔法少女とか……プリンセスの生まれ変わりがいるとか……りう君こういう話聞いたことあるっすか?」
「この町ってことは現実で?」
「現実っすね」
「流石に現実では聞いたことないな」
「そうっすよねえ」
「ほなみ先輩が魔法少女だったらかわいいだろうなあ……でも危ないから俺が守らないと」
「……そうっすよねえ」
魔法少女は普通女の子であること、魔法少女は危険であることを改めて突きつけられたれいりは遠い目をしました。
昼休み、りじゃが財布を忘れてお昼ご飯が食べられないと泣きついてきたので、れいりはりじゃと一緒に購買へ向かっていました。
「あ〜!焼きそばパン!」
りじゃは焼きそばパンへ手を伸ばします。しかしりじゃの手が届くより前に、誰かが最後の焼きそばパンを取ってしまいました。
「わ゛ゃ゛〜!!!僕のお昼ご飯〜!」
「そんなに欲しいの?変な奴、はい」
りじゃに焼きそばパンを渡すその生徒にれいりは見覚えがありました。
「もしかして2年の成績トップの梗凛先輩っすか?」
「苗字だとほなみと被るからうるきでいいよ」
梗凛うるき──私立神座学園の2年生で全教科トップ、それどころか3年生を含めても学力は最上位と噂されている有名な生徒でした。
「ちょっと君達とお話したかったんだよね」
うるきに連れられるまま、れいり達は「魔神部」といううるきが部長の謎の部活へ入部させられてしまいました。しかしれいりも何も考えずに入部したわけではありません。
「君達がアルカの言ってた新しい魔法少女だよね」
うるきはそう言って、れいり達が昨日アルカからもらったパクトと同じ物を見せました。
「もしかして、うるき先輩も」
「魔法少女だよ。でも最近忙しくてね、協力者が欲しいんだ」
「オレ達も聞きたいことあるっすし、先輩がいると心強いっす!」
「交渉成立だね。よろしく」
その日は早速3人で街のパトロールをしていました。すると騒ぎが起きていました。人が倒れたようです。助けようと近寄った瞬間、空から怪物──ウツロンダーが現れました。人々は逃げ惑います。
「キャハハ!魔法少女の匂いが増えた!」
「ウツロ団……!」
うるきの見上げた先には、金髪の女の子がウツロンダーの肩に乗っていました。
れいりはうるきの言った「ウツロ団」のことも、ウツロンダーに乗った女の子のことも知りません。でも、このウツロンダーを倒さねばならないことはわかっていました。
「ブルーミングジュエル!」
れいり、りじゃ、うるきの声が重なり、3人はたちまち魔法少女へ変身しました。
苦戦しながらも3人で協力してウツロンダーを倒すと、女の子は逃げていきました。倒れた人も意識を取り戻し、れいりはほっとします。
「あいつ、また魔法少女を……」
それを建物の上から誰かが見ていました。