第3話「これがオレの力!?ラブソウルステッキっす!」


ウツロンダーを倒し、魔神部としてうるきに呼び出されることが増えたれいりとりじゃ。完全に使い走りですが、魔法少女としても学園の生徒としても先輩なので逆らえません。

れいりは折を見てウツロ団についてうるきに聞こうとしていました。りじゃは知りません。ある日偶然昼休みに魔神部の部室で3人が揃ったため、れいりはうるきに聞きました。

「この前のウツロ団って何っすか?部長の知り合いっすか?」

「ウツロ団について僕もよく知らないけど、ウツロンダーを生み出して心の雫を奪っていることはわかってるよ」

「じゃあ敵ってことっすか?」

「多分ね。そもそも今、誰を信じていいのかあんまりわからないからさ」

ここでトントン、と部室の扉が叩かれました。魔法少女の話を聞かれるわけにはいかないので、れいりは話をやめました。

「うるき、いる?忙しいかなっ?」

「いいよ、入って。何か他にいるけど気にしないで」

そして扉を開けて入ってきたのはうるきの双子の姉、ほなみでした。


「お昼ご飯まだなら家にあったパン食べて。消費期限切れそうなんだっ」

「切れそうっていうか切れてるよこれ!午前と午後の違いもわからないの!?」

「あ〜!それ僕が気になってた焼き鳥パンだ〜!くれるの〜?」

りじゃが首を突っ込みます。

「食べるならあげるよっ」

ほなみがりじゃに焼き鳥パンを渡そうとした瞬間、誰かが焼き鳥パンを掠め取りました。

「ほなみ先輩から食べ物をいただけるのは俺だけだ!」

「……りう君何やってるんすか」

「本当に君どこにでも湧くよね」

焼き鳥パンを持ったりうがれいり達の前に現れました。

「れいり?なんであんたが魔神部の部室にいるんだ」

「色々あって入部したっす」

「ふーん。このゲスミドリ性格悪いから気をつけろよ。ほなみ先輩、お弁当作ったので向こうで召し上がりませんか?」

「焼き鳥パンよりおいしそうっ」

「そう思うなら最初から焼き鳥パン買わないでよ!」

うるきの叫びを無視してほなみとりうは部室の外へ出ていきました。


放課後。3人はまたパトロール……という名の食べ歩きをしていました。焼き鳥パンの話をしていたせいで、焼き鳥が食べたくなったのです。

「そういやアルカって人間の食べ物食うんすかね」

「知らない。ドブネズミでも食べてるんじゃない?」

「ドブネズミ食うなら人間の食べ物も食いそうっすが……」

「呼んだ?」

目の前から胡散臭い声がしました。アルカです。れいりは周りの人に見られている可能性を危惧し、ぬいぐるみと言い張れるように急いでアルカを抱き寄せました。

「空飛ぶぬいぐるみだってUMA研究者に目をつけられたらどうするんすか!」

「そいつを魔法少女にするよ」

「するなっす!もう、これでも食って黙るっす!」

れいりは焼き鳥をアルカの口にねじ込みました。アルカはもごもごした後、焼き鳥を飲み込みました。

「おいしいねこれ。気に入ったよ」

「それはよかったっすね」

「嬉しいかられいりにご褒美あげる」

「魔法で作った偽札とかはやめるっすよ」

「れいり、アルカちゃんに当たり強くない?」

りじゃは焼き鳥をもごもごしながら見ています。うるきもアルカの次の行動を注視しています。

「はい、ご褒美」

「へ?何ももらってないっすよ?」

「次変身した時にわかるよ……ん?」

急にアルカの顔つきが変わりました。

「ウツロンダーの気配!あっち!」

アルカはれいりの腕から飛び出してしまいました。3人は慌ててアルカを追いかけます。


辿り着いた先は公園の噴水でした。しかし噴水は黒いドロドロした液体を放っています。ウツロンダーが噴水と融合したようです。周りの人は逃げ惑っています。

「りじゃ!部長!」

「おけけのすけ〜!」

「もちろんだよ!」

「ブルーミングジュエル!」

3人は変身して、ウツロンダーに挑みます。しかしウツロンダーも力をつけているようで、苦戦してしまいます。

「何か……何か殴るものがあれば……!」

れいりが呟いた瞬間、れいりの右手が光りました。あまりの眩しさに目をつぶってしまいます。

光が落ち着いて右手を見ると、大ぶりのステッキがれいりの右手に握られていました。

「それがご褒美、ラブソウルステッキ!」

「ラブソウルステッキ……!これなら!」

れいりはウツロンダーに飛びかかり、ラブソウルステッキを向けました。

「ラブソウルウェーブ!」

ラブソウルステッキから放たれた衝撃波がウツロンダーをあっという間に粉々にしました。

「れいりつよ〜い!」

「新人にしてはやるね」

3人は集まって勝利を喜びます。


「作戦失敗……退却……」

物陰から3人を見ていた金髪の少年が闇に姿を消しました。